★★★★★

◆ロード・オブ・ザ・リングー王の帰還ー
 (原題:THE LORD OF THE RINGSーTHE RETURN OF THE KINGー)
■監督/ピーター・ジャクソン ■脚本/フィリッパ・ボウエン他 ■原作/J. R. R.トールキン
■出演/イライジャ・ウッド、イアン・マッケラン、ヴィゴ・モーテンセン、リヴ・タイラー他

 指輪を葬る旅に出た9人の仲間達は、前作第2部で3つに別れた。ゴラムの案内で滅びの山へと向かったフロド(イライジャ・ウッド)とサム(ショーン・アスティン)は、指輪を取り戻したいゴラムの画策で窮地に陥る。一方、ヘルム峡谷の戦いに勝利したガンダルフ(イアン・マッケラン)、アラゴルン(ヴィゴ・モーテンセン)、レゴラス(オーランド・ブルーム)、ギムリ(ジョン・リス=デイヴィス)達は、エントと共にオルサンクの塔を襲撃したメリー(ドミニク・モナハン)、ピピン(ビリー・ボイド)らと合流する。再会に喜ぶ間もなく、サウロンが人間の国ゴンドールを襲うと知ったガンダルフは、忠告する為、ミナス・ティリスの都へ向かう。それぞれにとって最期の闘いが今始まろうとしていた―。映画史最高のスケールで描かれ、世界的に愛された超大作「指輪物語」3部作、感動の完結編!(第1部・第2部の感想は、2002年および2003年劇場鑑賞作を参照)

 過去シリーズ化された作品はいくつもあるが、大抵1作目以降は質が落ち、駄作になりがちな物が多い中、全作が感動・興奮の高評価に値した初めての作品。とにかくすべてが素晴らしい!!スケールの大きさ、撮影技術や視覚効果等の目に見える技術的なクオリティは言われるまでもなく、何よりもこの完結編が観客の心を強く惹き付けるのは、登場人物それぞれの心の葛藤や内面的な成長、勇気・愛といった精神的な部分がリアルでダイレクトに伝わってくるからだ。平和を愛し、かつてはいたずらばかりしていたメリーとピピンは、ボロミアの死やエントとの出会いで成長し、闘士として凛々しい姿を見せてくれる。アラゴルンは王として申し分ないほどの行動力や統率力を持ち、全軍の先頭に立って皆を奮い立たせる。父王を守るため勇猛果敢に剣を振るうエオウィン、そして限りない命を捨ててアラゴルンに尽くそうとするアルウェンら女達の勇気と愛。常に敵対意識を持っていたエルフのレゴラスとドワーフのギムリも共に旅をしてきたことで心に変化が表れる。ギムリが「エルフの隣で死ぬなんて…」と言った時のレゴラスの一言とそれに対するギムリの一言は心に強く残り、彼らが羨ましくさえ思えてくる。そして今回、最も印象に残ったのはフロドを見守り続けるサム。指輪の摩力に心を蝕まれていくフロドを勇気付け、最後まで信念を失わない姿と、「指輪の重荷は背負えなくても、貴方を背負うことなら出来ます」という彼の台詞には涙せずにはいられない(;<>;)そして、「フロドのために…」と、勝ち目のない戦いに身を投じていくアラゴルンら仲間達の絆の強さには心を打たれる。他にも思わず目頭が熱くなるようなシーンはいくつかあるのだが、アラゴルンの「君たちは誰にも頭を下げる必要はないのだ」という一言で、すべての人々がホビット族の4人に対して感謝と敬意を表したあるシーンは特に感動的で涙々…(ToT)登場人物達の感情に一喜一憂し、常にハラハラドキドキさせられてしまう。ここまでそれぞれの人物に入れ込んでしまうドラマティックな映画は過去あまりなかったように思う。とにかく素晴らしく見応えある作品。これでもうあの旅の仲間達と会えなくなるのかと思うと寂しくて仕方ない(苦)ちなみに、本作ではピピンの歌声も聴くことが出来る。意外に澄んだ綺麗な声だったので思わず聞き惚れてしまったのだが、どうやらピピン役のビリー・ボイドはミュージシャンでもあるらしい。どうりで…(*^_^*)それから、前作でも気にはなっていたのだが、この完結編でファラミア熱がさらに急上昇(笑)憂いを帯びたブルーグレイの瞳から目が離せないっ(^_^;)
 ところで、公開初日朝一に行ったせいかかなり混んでいて、不本意ながら両隣空席で鑑賞するという事が出来なかったんだが、私の右隣に座った高校生らしき男の子3人組が、本編始まってから約2時間以上に渡り、ず〜〜〜〜〜っと菓子をボリボリバリバリ食べていて、1袋終わってはまた次の菓子袋を取り出し、ガサガサバリバリ…めちゃくちゃうるさいっ!!!「いい加減にしろっ!!!!!せっかくの感動作が台無しだ!!!」…と、怒鳴ってやりたいくらいだった(怒)飲食禁止になっているわけではないため、うかつに忠告も出来ないが、予告編の間ならまだしも、本編が始まってからは控えるのが当たり前の鑑賞マナーだ!せめてそっと袋を開けるとかしたらどうなんだ!?まったく…そんな常識的な事も言われなきゃ気付かないようじゃ情けない(-_-メ)2回目の鑑賞行く機会があれば、今度はほとんど客が入らなくなった頃、誰も周りにいない席で一人、悠々と楽しみたい。
◆第76回アカデミー賞【作品賞・監督賞・脚色賞・美術賞・衣裳デザイン賞・編集賞・メイクアップ賞・歌曲賞・作曲賞・音響賞・視覚効果賞】受賞

★★★★★

◆ラストサムライ (原題:THE LAST SAMURAI)
■監督/エドワード・ズウィック ■脚本/エドワード・ズウィック、マーシャル・ハースコビッツ
■出演/トム・クルーズ、渡辺謙、真田広之、小雪、ティモシー・スポール、中村七之助他

 19世紀末、近代化を目指す日本政府に軍隊の教官として招かれたオールグレン(トム・クルーズ)は、初めて「侍」と戦いを交え負傷し、勝元(渡辺謙)に捕えられ、村へ運ばれた。勝元は、天皇に忠義を捧げながら、武士の根絶を目論む官軍に反旗を翻していた。異国の村で「侍」の生活を目の当たりにしたオールグレンは、その静かで強い精神に心動かされ、やがて信念を貫く武士の精神を吸収していく―。
 外国作品で描かれる日本国(日本人)は、どうも違和感を感じる物が多く、「こんなんじゃない」と思わず呟いてしまうような物が大半だったが、この作品では「正当派」な日本人が真の英雄として描かれていると思う。とにかく、勝元演じる渡辺謙の演技が、主演のトム・クルーズを食うほど強烈で素晴らしい!殺陣シーンも数々の時代劇をこなしてきた渡辺・真田氏等、さすがに大御所連中だけあって文句無しの大迫力!元来、新撰組の大FANである私にとって、勝元らの存在・生き様は、同じく時代のうねりに呑み込まれていった新撰組とあまりにも酷似していて余計感情移入してしまう。勝元が新撰組副長・土方歳三にさえ見え、その壮絶な最後には胸が締め付けられるほどだった(>_<)刀1本にかけた彼らの侍魂と歴史と命の重さに涙せずにはいられない…(ToT)個人的には、天皇(中村七之助)がオールグレンから刀を受け取るシーンで、天皇に「重いな…」と一言言わせたかった。現在の日本国政府の影で、犠牲になってきた「侍」達がどれだけ沢山いたことか…!!その歴史と命が「最後の刀」に重くのしかかっているのだという事を忘れないために…。
 本作は、弟76回アカデミー賞助演男優賞に日本人としては何十年ぶりかで渡辺謙氏がノミネートされるという快挙を成し遂げている。この評価からしても、少なからず海外にも「武士道」が受け入れられたのだと信じたい。ちなみに、私としては渡辺謙氏よりも剣術師範(?)役の真田広之がお気に入り。元々好きな俳優ではあったが、寡黙で忠実な家臣である彼がとてもカッコイイのだ(*^_^*)作中では英語が話せない設定だったようだが、実際はかなり流暢に話せるという真田氏。撮影現場では外国人クルーを相手に冗談を言ったり、真剣に打ち合わせをしたり、現場のムードメーカー的存在だった模様。それにしても…新撰組も苦しめられた「飛び道具」はやはり好きになれない(苦)

★★★★

◆ドッグヴィル(原題:DOGVILLE)
■監督・脚本/ラース・フォン・トリアー ■製作/ヴィベケ・ウィンデロフ
■出演/ニコール・キッドマン、ポール・ベタニー、クロエ・セヴィニー、ローレン・バコール他

 平和で小さな村・ドッグヴィルにひとりの女・グレース(ニコール・キッドマン)がギャングに追われ逃げ込んでくる。素性の知れない彼女だったが、人々を正しく導くことに情熱を燃やすトム(ポール・ベタニー)は、彼女をかくまうことを住民たちに提案し、許可を得る。グレースは村人全員の仕事を献身的に手伝い、閉鎖的な村人達と徐々に打ち解けていく。しかし、ある出来事をきっかけに物語は一気に破滅的結末へと展開してゆくー。
 今まで見た映画の中で最も「異色」な作品だった。なんせ映画の全編が廃墟の工場の黒い床に、白いチョークで線が引かれただけの斬新なセットで撮影されていたからだ。道も畑もすべて線で描かれていて、家もMr.○○'S HOUSEといった具合。それぞれ線で区切られた「家」の中には申し訳程度に置かれた実にシンプルな家具類のみ。当然ドアもないのだが、出演者達は皆あたかもそこにドアがあるかのようにノックし、何もない畑で草取りをする。音声はあるものの、一種パントマイム的要素が盛り込まれ、演じる役者の演技力も問われる作品だと思う。限られた空間の中で展開するストーリーは濃厚で、その閉塞感が動揺・憎悪・暴力といったネガティブな要素を持って精神に深く作用する為、ダークな展開が苦手な方には少々息苦しいかも?思えばラース監督作で他に有名な「ダンサー・イン・ザ・ダーク」もその名の通り「ダーク」だった。実際出演者達の中には「ラース監督の作品には二度と出たくない」「監督は頭がおかしい」等とコメントしている人もいたようだ(笑)ミニシアター系の作品にしては珍しく3時間もある作品なので「そう言われると余計観たくなる」という奇特な方や異色な映画に興味のある方にのみお勧めする。ラストは意外と「凶暴」。ちなみに“海賊ジェニー”をモデルにした物語らしいので、その話を知ってる方はオチが読めてしまうかも?幸運にも何も知らなかった私は意外と楽しめた。何より斬新なセットは今後どの映画を観ても忘れられないであろう、というくらい印象に残った(^_^;)

★★★★

◆キル・ビル Vol.2ーザ・ラブ・ストーリー(原題:KILL BILL Vol.2ーKILL is LOVE)
■監督・脚本/クエンティン・タランティーノ ■製作/ローレンス・ベンダー
■出演/ユマ・サーマン、デヴィッド・キャラダイン、マイケル・マドセン、ダリル・ハンナ他

 4年前、幸せを求めて暗殺稼業から足を洗おうとしたザ・ブライド(ユマ・サーマン)は、かつての仲間だった毒ヘビ暗殺団に夫や友人、そしてお腹の子供…すべてを奪われ、自身もビルの放った銃弾に倒れる。昏睡状態から目覚めた4年後、ブライドは復習の旅に出る。オーレン・イシイ、ヴァニータ・グリーンへの報復を終えたブライドは、「復習リスト」の残り3人、バド(マイケル・マドセン)・エル(ダリル・ハンナ)、そしてビル(デヴィッド・キャラダイン)を倒すため、テキサスの荒野へと辿り着いた。しかし、彼女はまだ知らなかった。死んだはずの子供が実は生きているという事を…。2003年に公開された「KILL BILL Vol.1」の続編。
 元々1本の作品として公開されるはずだった物を2本に分けた作品だが、タラQはこれを本気で1本にまとめるつもりだったのだろうか(^_^;)つくづく2本に分けてくれて良かった。カットされるようなシーンは思いつかないし、2本に分けてたっぷり時間を割いたおかげで、感情面がより濃厚に描かれたと思う。後半、少しまったりしすぎる面も感じられたが、相変わらずファイトシーンはカッコイイ。特に狭い空間で繰り広げられるエル・ドライバーとのキャット・ファイトは興奮の連続で思わず力が入る。エル役のダリル・ハンナが想像以上に格好良く、始終目を奪われっ放しだった(*^_^*)180cmあるという長身にブラックスーツ&眼帯。嫌でも目を惹くスタイルだ。本作ではなぜエルが眼帯をするハメになったのか…その原因も証されているので要チェック☆バドとの闘いにおいては「そんな馬鹿な…」というシーンもあるが、そこは世界一の映画オタク、タラQ監督の遊び心。彼の作品では「不可能はない」のだろう(笑)今や大スターの仲間入りとも言えるサミュエル・L・ジャクソンを「あんな端役」で起用してしまうのもタラQ監督お馴染みの愛嬌。興味のある方は是非探してみて下さい(^_^)尚、本作には武道家としてクンフーFANの間で名高いゴードン・リューが、実在した中国の武道家、パイ・メイ役で出演している。当初、この役はタラQ本人が演じる予定でやる気満々だったのだが、監督業との両立も難しく、泣く泣く断念。尊敬するゴードン・リューにオファーしたそうだ。ちなみにゴードン・リューはVol.1ではジョニー・モー役でも出演している。(Vol.1の感想は2003年劇場鑑賞作を参照)

★★★
◆トロイ(原題:TROY)
■監督/ウォルフガング・ペーターゼン ■脚本/デイビッド・ベニオフ
■出演/ブラッド・ピット、エリック・バナ、オーランド・ブルーム、ダイアン・クルーガー他

 かつていくつもの国家に分かれていたギリシャだが、ギリシャ連合スパルタとその宿敵トロイの間に無血同盟が結ばれようとしていた。しかし、トロイの王子パリス(オーランド・ブルーム)とスパルタの王妃ヘレン(ダイアン・クルーガー)の間には禁断の恋が芽生え、パリスは若さと純粋すぎる情熱ゆえに、ヘレンを奪い去ってしまう。屈辱に燃えるスパルタの王は、ギリシャ軍千隻の船と「女神の息子」と呼ばれる無敵の戦士・アキレス(ブラッド・ピット)を差し向け進軍を開始。一方トロイでは、パリスの兄で「太陽の子」と呼ばれるヘクトル(エリック・バナ)が決戦に備えていた。
 史上最も激しく美しい物語、トロイ戦争を描いたホメロスの「イリアス」を映画化したスペクタクル巨編。トロイといえばトロイの木馬、アキレスといえばアキレス腱。その語源の由来や詳細はすっかり忘れていたが、物語が進むにつれ少しずつ思い出した。血生臭い戦闘の中で、唯一巧妙さゆえに爽快ともとれる「トロイの木馬」作戦。だが物語の本質は悲劇だ。古代の勇者にとって避けられぬ宿命である闘いに身を投じていくアキレスとヘクトルの一騎打ちは、派手さに物を言わせたような合戦シーンより余程見応えがある。スタントを使わずに行ったという二人の戦闘シーンは必見。ただ、アキレスとヘクトルは非常に男らしい勇者だが、元々の原因を作った弟・パリスはあまりにも情けなく印象は非常に薄い。ダイアン・クルーガーは思わず奪い去りたくなるのがわかるくらい本当に美形だったが…。

★★★
◆レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード(原題:ONCE UPON A TIME IN MEXICO)
■監督・脚本/ロバート・ロドリゲス ■製作/エリザベス・アベラン、カルロス・ガラルド
■出演/アントニア・バンデラス、ジョニー・デップ、サルマ・ハエック、ミッキー・ローク他
 かつて1人で2つの町を始末した伝説の男、エル・マリアッチ(アントニオ・バンデラス)。その噂を耳にしたCIA捜査官サンズ(ジョニー・デップ)は、この国で起ころうとしているクーデター計画を潰すため、彼に将軍マルケスの暗殺を依頼する。マルケスはマリアッチの恋人・カロリーナ(サルマ・ハエック)を殺した仇だったー。一方、マルケスを裏で操る麻薬王バリーリョ(ウィレム・デフォー)は、クーデターにより政府を我が物にしようと暗躍していた。

 ロバート・ロドリゲス監督の出世作「エル・マリアッチ」「デスペラード」に続くエル・マリアッチシリーズ第3弾。私が最も敬愛する監督であり、前作「デスペラード」にも出演していたQ.タランティーノとは盟友でもあるロドリゲス監督の新作という事で楽しみにしていた。両監督作品ではお馴染みの過激なファイトシーンはさすが。内容は相変わらずこれといった山も谷もないのだが、派手なガン・アクションは存分に楽しめる。サルマ・ハエックは前作から引き続きの出演だが、本作で登場したジョニー・デップの役どころがまたカッコイイ!CIAと言えども決して「善」とは言えず、どちらかと言うと極悪捜査官なのだが、J.デップが持つ独特の魅力でバンデラスをも食っている。個人的には「エンゼル・ハート」や「逃亡者」で心惹かれたミッキー・ロークが本作でも変わらぬ名演技を見せてくれた点が嬉しかった。しかし…歳とったなミッキー(笑)

★★★
◆ミスティック・リバー(原題:MYSTIC RIVER)
■監督/クリント・イーストウッド ■脚本/ブライアン・ヘルゲランド
■出演/ショーン・ペン、ティム・ロビンス、ケビン・ベーコン、ローレンス・フィッシュバーン他
 幼なじみの少年3人組ジミー(ショーン・ペン)、デイブ(ティム・ロビンス)、ショーン(ケビン・ベーコン)が路上で遊んでいると、不審な車が近づいてきた。警官を名乗る2人組は、デイブだけを車に乗せて走り去る。数日後、デイブは暴行を受け、無残な姿で発見される。その事件を機に3人は疎遠になっていった。しかし、25年後、一つの殺人事件が彼らを再び結びつけた。一人は被害者の娘の父親として。一人は捜査を担当する刑事として。そして、もう一人は殺人の容疑者として…。
 俳優としても有名なクリント・イーストウッドがベストセラー小説を映画化。ティム・ロビンスがゴールデン・グローブ賞を受賞したり、アカデミー賞の作品賞や助演男優賞にもノミネートされているという事で注目を浴びているが、個人的には期待していたほどではなかった。確かに主演3人組の演技はベテラン勢なだけあって見応えあるが、全体的に淡々と話が進み、どうにも静かすぎるのだ。ミステリー的要素を含みつつも謎解きに関してはあまり語られず、心理描写が全体的に重く感じる。良く言えば「重厚」。ハリウッドが好きそうな作品だ。結末には「ああ…何という事を…」という虚しさと切なさとやり切れなさを感じる。
◆第76回アカデミー賞【主演男優賞(ショーン・ペン)・助演男優賞(ティム・ロビンス)】受賞

★★★
◆コール(原題:TRAPPED)
■監督/ルイス・マンドーキ ■脚本/グレッグ・アイルズ
■出演/ダコタ・ファニング、ケビン・ベーコン、シャリーズ・セロン、コートニー・ラヴ他
 カレン(シャーリズ・セロン)は、夫のウィル(スチュアート・タウンゼント)と6歳の娘アビー(ダコタ・ファニング)と幸せに暮らしていた。ある日、アビーが誘拐され、カレンの前に誘拐犯のリーダー、ジョー(ケビン・ベーコン)が現れる。そして、アビーの前にはジョーの従兄弟マーヴィン(プルイット・テイラー・ヴィンス)が、ウィルの前にはジョーの妻シェリル(コートニー・ラヴ)が現れ、誘拐犯3人組は家族3人を別々の場所で監視し、ジョーの周到な計画でいつものように誘拐を成功させようとしていた。しかし、アビーが喘息持ちだった事により、ジョーの計画は狂い始め、誘拐犯3人組に思いもよらない混乱を巻き起こしていく…。
 誘拐を描いた作品は映画史に数々登場するが、本作では3人の誘拐犯と3人の家族がそれぞれ別の場所で対立しあい、物語を進行させていくという複雑なサスペンスとなっている。アビーの病気が作品により緊張感を与え、誘拐犯3人それぞれの心情の変化が面白さを引き立ててくれる。そして、やはりケビン・ベーコンにはジョーのような不気味な笑みを称えたひとクセある役の方がお似合いだと思う(*^_^*)ところで、コートニー・ラヴは最近すっかり女優として定着してしまった模様…。だいぶ演技も様になってきているのは良い事だが、ミュージシャンとしての方が印象が強かっただけに、歌ってる姿ももっと見たい気がする(^_^;)

★★
◆ビッグ・フィッシュ(原題:BIG FISH)
■監督/ティム・バートン ■原作/ダニエル・ウォレス
■出演/ユアン・マクレガー、アルバート・フィニー、ビリー・クラダップ、ジェシカ・ラング他

 エドワード(アルバート・フィニー)は自分の人生を、常にロマンティックなおとぎ話のように語ってきた。未来を見る魔女、一緒に旅をした巨人、美しい町、そして息子が生まれた日に釣った大きな魚の事。彼が語るおとぎ話は楽しく、誰もが幸せな気持ちになった。ただ一人、彼の息子ウィル(ビリー・クラダップ)を除いては…。子供の頃は父の話に夢中だったウィルも、成長するにつれ真実の話を求めていた。だがエドワードは一向に事実を話そうとしない。そんな時、エドワードの部屋を片づける最中に見付けた“真実のかけら”。「父の話はすべてが嘘ではなかった!?」ウィルは、ホラ話に隠された父の人生を探る旅に出る。そして彼がその大切さに気付いたのは、エドワードの最期の時だった…。
 同名ベストセラー小説の映画化。危険な道をわざわざ選び、冒険を心から楽しむ若き日のエドワード役にユアン・マクレガーが抜擢された為、ユアン目当てで鑑賞した映画だが、前評判の高さのわりに私には退屈なストーリーだった。おとぎ話の世界の独特な美しさはあるものの、一つ一つのエピソードが突拍子もなく繋がるのでその意図するところと構成が伝わりにくい。少なくとも私には「それで結局何が言いたかった事なの?」という感じ。父と息子のお涙頂戴劇かと思えばそうでもない。ハリウッド好みするファンタスティックなヒューマンストーリーに前評判の高さの要因もわかる気がするが、中途半端なイメージが拭えない。これが「おとぎ話だから輪郭はぼかした方が良い」と意図するところから作られたものだとしたら、私は見事に策に乗ってしまった事になるのだが…?

★★
◆マスター・アンド・コマンダー(原題:MASTER AND COMMANDERーTHE FAR SIDE OF THE WORLDー)
■監督/ピーター・ウィアー ■脚本/ピーター・ウィアー、ジョン・コーリー
■出演/ラッセル・クロウ、ポール・ベタニー、マックス・パーキス、ビリー・ボイド他
 1805年、ヨーロッパ征服を狙うナポレオンの前に多くの兵士が犠牲になり、英国はその兵力を補うために幼い少年兵までも戦場に送らなければならなかった。「幸運のジャック」と船員達に慕われる船長、ジャック・オーブリー(ラッセル・クロウ)率いる海軍のサプライズ号は、攻撃力で圧倒的優位に立つフランス軍のアケロン号を拿捕するという危険な任務の為、荒れ狂う大海原に繰り出して行ったー。
 パトリック・オブライアンの海洋冒険小説を映画化。決して衛生的ではない男だらけの狭い船内で、12歳の少年士官・ブレイクニー演じるマックス・パーキスが文字通り天使のように可愛く、目を惹き付けられる。この少年兵の成長してゆく姿、船長と船長の親友である医者のスティーブン(ポール・ベタニー)との友情、そしてもちろん迫力の戦闘シーンも見所なのだが、特に目を奪われたのは史上初めて映画としての撮影が許可されたというガラパゴス諸島の映像だろう。戦闘や嵐という困難をくぐり抜け、世界的に珍しい珍種の宝庫である美しいガラパゴス諸島での休息シーン。なんとも豪華だ(*^_^*)
◆第76回アカデミー賞【撮影賞・音響効果賞】受賞

★★
◆オーシャンオブファイヤー(原題:HIDALGO)
■監督/ジョー・ジョンストン ■脚本/ジョン・フスコ
■出演/ヴィゴ・モーテンセン、オマー・シャリフ、ズレイカ・ロビンソン、ルイス・ロンバート他

 勝者には最高の富と名誉が与えられ、敗者にはただ死あるのみ…。千年の歴史を誇るアラビア砂漠のサバイバル・レース“オーシャン・オブ・ファイヤー”に参加できるのは、王の血族と高貴な血筋を持つアラビア馬のみ。しかしその史上初の例外として、アメリカからやってきたカウボーイ・フランク(ヴィゴ・モーテンセン)と野生馬・ヒダルゴのコンビがレースに挑む。彼らの行く手に待ち受けるのは、熱砂地獄や砂嵐、流砂地獄。しかし何よりも恐ろしいのは大自然の驚異よりも人間達の邪悪な陰謀だったー。
 「ロード・オブ・ザ・リング」で人気爆発となったヴィゴ・モーテンセン主演のアクション・アドベンチャー。普段あまりアドベンチャー映画は観ない私だが、やはり同ルートでヴィゴのFANになってしまった為、取りあえず観ておこうと思った作品(^_^;)内容的にはCGを駆使した砂嵐シーンで恐怖を演出し、観客をエキサイティングさせるにはもってこいのレースを主体にする。そこに多少のロマンスを盛り込み、適度にそれらを阻む悪役の設定。なんて事はない、普通の娯楽作品である。ただヴィゴがヒダルゴに乗って颯爽と駆け抜ける様は期待を裏切らず、やはりカッコ良かったし、ヒダルゴの主人を思う健気な演技も良かった(動物には弱い…/笑)ちなみに、ヴィゴは作品中ラコタ語を話すシーンがあるのだが、元々6カ国語に長けていた為、撮影も流暢に進んだらしい。さらに撮影後にはヒダルゴを演じた5頭の中から、最も優秀だった1頭をそのまま買い取り、自宅に新しく土地を購入して飼育しているとか。ただですらカッコイイのにこうしたセレブなエピソードまで付いてくると人気爆発なのも納得出来る?(笑)

★★
◆クイール
■監督/崔洋一 ■脚本/丸山昇一、中村義洋 ■原作/石黒謙吾「盲導犬クイールの一生」
■出演/椎名桔平、小林薫、寺島しのぶ、香川照之、戸田恵子、ラフィー(犬)他
 お腹にブチのあるラブラドール・レトリバーが盲導犬訓練士の多和田(椎名桔平)に引き取られる。1歳になるまでパピーウォーカーの家で育てられる子犬は、クイールと名付けられ、人間との信頼関係を育んでいく。元気に育ったクイール(ラフィー)は1歳になり、盲導犬となるべく、多和田の訓練を受け始めた。やがてクイールは、視覚障害者の渡辺(小林薫)と出会い、彼の盲導犬として共に訓練を受けるようになる。渡辺は犬に慣れない頑固者だったが、徐々に心を通わせていく。そして2人がかけがえのないパートナーとなったある日、別れは突然やって来たー。
 ベストセラーとなった「盲導犬クイールの一生」を映画化した作品。原作は読んだ事ないが、犬好きの私にとってはクイールの仕草一つ一つがたまらなく愛しくて仕方なかった(>_<)ただ、長年白杖に頼り犬を拒否してきた頑固者の渡辺が、クイールを受け入れる決心をするまでの説得力がイマイチ弱い。もう少しお互いの信頼関係を深く描写するようなシーンがあった方がより入り込めるのだが。…と言いつつ、しっかり泣いてきた(;<>;)
 盲導犬関連のドキュメント番組は、過去いくつか観た事があるので、盲導犬の一生についてある程度の認識はあった。私は視覚障害者ではないのでリアルに語ることは出来ないが、彼らにとって盲導犬がいかに必要で大事なパートナーかはよくわかっているつもりだ。ここ数年になってやっと公共交通機関や施設を始め、ホテルやレストラン等でも盲導犬の同伴を拒否してはいけない法律が定められた。これからもこうした盲導犬に対する世間の認識度が増す事を願っている。

★★
◆ONE PIECEー呪われた聖剣ー
■監督/竹之内和久 ■原作/尾田栄一郎 ■キャラクターデザイン&作画監督/小泉昇
■声の出演/ルフィ(田中真弓)、ゾロ(中井和哉)、サンジ(平田広明)、ウソップ(山口勝平)、チョッパー(大谷育江)、ナミ(岡村明美)、ロビン(山口由里子)他
 最高の宝刀と呼ばれた七星剣を求め、アスカ島にたどり着いたルフィ海賊団一行だったが、ゾロが突然姿を消してしまう。ゾロを探すうちにルフィ達は美しい少女マヤと出会う。マヤを追いかけるうちに仲間とはぐれたルフィとウソップは、洞窟の中へ。一方残されたサンジやナミ達は、アスカの村に辿り着くが、そこへ海軍がやってきた。その中には何故か武装したゾロの姿が!? ゾロは仲間であるサンジ達に剣を向け、かつてアスカの国を滅ぼしたという七星剣の魔力を封じた宝玉3つをマヤから奪い去っていったー。超人気海賊漫画の劇場版第5作。
 最近のワンピ映画では素人を声優に起用しているが、今回はゾロの友人・サガ役に中村獅童、サガの弟子・トウマ役にNEWSの内博貴、マヤの祖母役に久本雅美という布陣。予想通りヒドイ吹替だった。俳優や舞台で場数を踏んでる中村獅童はまだマシだが、内博貴は棒読みもイイトコ。いい加減素人の起用はやめて欲しい。原作を読み込み、キャラクターの性格を良く理解している客からすると、いくらかつての友人の為とはいえ、ゾロがあそこまであっさり仲間を裏切り傷つけ、略奪者のごとく宝玉を奪い去るなんて無理がある。仁も義もないようなキャラじゃないはず。そこまでの行為に至ったゾロの心理描写を90分という時間枠の中で描くのは困難かもしれないが、海軍にも堂々と入り込み、また海軍の連中も賞金首のゾロを目の前にしても見向きもしないなんていくらなんでもおかしい。もう少し納得いくストーリー展開にして欲しかった。その他クルー達の戦闘シーンも短すぎ。あっさり勝ってしまったので見せ場も何もなく、ウソップのギャグもこれといって冴えなかった。やっぱり監督はアニメと同じ宇田氏で、脚本もおだっちに書いてもらいたかった…(-_-;)

★★
◆ゴシカ(原題:GOTHIKA)
■監督/マシュー・カソビッツ ■脚本/セバスチャン・グティエレス
■出演/ハル・ベリー、ロバート・ダウニーJr.、ペネロペ・クルス、チャールズ・S・ダットン他
 女子刑務所の精神科病棟で働く医師ミランダ(ハル・ベリー)は、女囚クロエ(ペネロペ・クロス)の治療を担当していた。彼女は悪魔に陵辱され、その意志で父親を殺したという。そんなある晩、帰宅途中のミランダの車の前に見知らぬ少女が立ち塞がる。間一髪で事故を避けたミランダは少女に駆け寄るが、次の瞬間ミランダは自分の勤務先である精神科病棟のベッド上で目覚めた。混乱するミランダに告げられた驚愕の事実―。それは彼女が夫を殺害し、錯乱状態でこの病室に収監されたというのだ。あの事故の後、彼女の身に一体何が起こったのか?
 ホラー映画と宣伝されてるわりには意外に恐怖感を感じなかった。本作の謎解きのキーワードとして度々登場するのは「NOT ALONE(ひとりではない)」。この言葉に多様な意味を持たせた展開はまぁまぁといったところか…。ちなみにENDINGの曲がLIMPBIZKITの「BEHIND BLUE EYES」だった。何ヶ月か前にこの曲のPVを見た時、「精神病院みたいだな…」と思った理由がようやく判明した(笑)

★★
◆コンフィデンス(原題:CONFIDENCE)
■監督/ジェームズ・フォーリー ■脚本/ダグ・ユング
■出演/エドワード・バーンズ、ダスティン・ホフマン、レイチェル・ワイズ、アンディ・ガルシア他
 物語は詐欺師ジェイク(エドワード・バーンズ)が頭に銃を突きつけられているシーンから始まる。なぜそんなハメに陥ったのか?事のてん末を話し始めるジェイク。それは完璧だったハズのシナリオ。信頼できる3人の仲間と買収した2人の警官。引っかけた相手は暗黒街の大物キング(ダスティン・ホフマン)。やがて死体で発見される仲間の1人。新たに加わった女スリのリリー(レイチェル・ワイズ)。そしてジェイクを執拗に追うFBIのビュターン(アンディ・ガルシア)。様々な人物が絡み合いながら複雑に展開するストーリー。すべては「伏線」。ラスト10分でダマされる逆転ムービー。

 こういった「ダマし映画」は過去にも沢山観てきた。「ユージュアル・サスペクツ」「レインディア・ゲーム」「オーシャンズ11」etc...。それらと比べて本作の評価がイマイチなのは、よく練られた脚本なんだろうが1回観ただけでは分かり難い点。2回目以降は評価が上がるかも??アンディ・ガルシアFANなので彼目当てで観たとも言える作品(^_^;)

◆インザカット(原題:IN THE CUT)
■監督/ジェーン・カンピオン ■脚本/ジェーン・カンピオン、スザンナ・ムーア
■出演/メグ・ライアン、マーク・ラファオ、ケヴィン・ベーコン、ジェニファー・ジェイソン・リー他

 大学で文学講師をするフラニー(メグ・ライアン)は、詩や言葉を集める事に情熱を傾ける独身女性。世間との繋がりを避け、腹違いの妹にのみ心を許す静かな生活を送っていた。だが、ある日近隣で起きた猟奇的な殺人事件がきっかけで、聞き込み捜査の刑事マロイ(マーク・ラファオ)と出逢い、彼女の心の奥底にあった激しい情念が徐々にあらわになっていくのだった。
 ケヴィン・ベーコンが出演している点と製作にニコール・キッドマンを迎えた作品という事で鑑賞したがその2点がなければ興味もわかない作品。とにかく暗くネガティブな感情が渦巻いている私の苦手なタイプの映画。タイトルの語源は女性の性器。官能作品とうたっているわりには性描写もさほど激しくなく、犯人も多少サスペンス映画を見慣れた人なら用意に想像がつく。



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